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地域密着型サービスとは?種類やサービス内容を解説!

高齢者人口の増加と介護人材の不足が深刻さを増すなか、地域ごとの課題に即した柔軟な介護提供体制の整備が急務となっています。
政府が推進する地域包括ケアシステムの中核を担うのが、「地域密着型サービス」です。
地域密着型サービスは、自治体が主体となり、小規模で利用者に近い形で提供される介護サービスの総称であり、地域資源を活用しながら持続可能な支援を実現する取り組みとして注目されています。
この記事では、地域密着型サービスの定義や制度誕生の背景、提供される具体的なサービスの種類、導入メリットや今後の課題まで、現場視点でわかりやすく解説します。
地域密着型サービスとは
地域密着型サービスの定義と目的
地域密着型サービスとは、2006年に介護保険法の改正により創設された、自治体単位で提供される小規模な介護サービスのことを指します。
地域の高齢者人口動態や地域資源に合わせて「地域包括ケア」の実現に向け、在宅で介護が必要になった利用者が住み慣れた地域で可能な限り自立した生活を続けられることを目的としています。
特に、高齢者や認知症の方々が安心して暮らし続けられる環境づくりが重要視されており、地域の実情に即した柔軟なサービス提供が可能となっています。
誕生の背景と制度化の経緯
地域密着型サービスの制度化は、介護ニーズの多様化と地域偏在の是正を目指した政策転換の一環でした。
制度導入前は、全国一律の画一的サービスが中心で、地域の個別課題に対応しきれない状況が課題とされていました。
厚生労働省はこれに対応するかたちで、介護保険制度の中に「地域密着型サービス」の枠組みを導入し、自治体が主体的にサービス提供体制を整える仕組みを整備しました。
この制度により、各市町村が地域特性を踏まえた独自のサービス設計や事業者指定を行うことが可能となり、地域包括ケアシステムの一翼を担う存在としての役割を強めています。
高齢化と地域課題への対応
日本は2007年に超高齢社会(人口における65歳以上の割合が21%以上)に突入してすでに15年以上が経過し世界一の高齢国となっており、特に地方部では高齢者人口の割合が非常に高い水準にあります。
2024年版中小企業白書でも示されているように、地方では人手不足が深刻化しており、サービスの維持・拡充には地域資源の活用と効率的な制度運用が不可欠です。
こうした背景から、地域密着型サービスは単なる介護提供手段としてだけでなく、地域経済や雇用の維持、住民の安心感の確保といった観点でも重要なインフラとなっています。
自治体と事業者が連携し、地域課題の解決を図る取り組みが今後ますます求められるでしょう。
地域密着型サービスの特徴
地域単位での提供体制
地域密着型サービスの最大の特徴は、市区町村単位でサービス提供体制が構築される点にあります。
事業所の設置や運営に関する指定や監督は各自治体が行うため、その地域の実情や住民ニーズに即した運用が可能です。
たとえば、都市部では認知症ケアや短時間の通所サービスに特化したニーズが高い一方、地方では訪問サービスの充実が求められることが多く、こうしたニーズの違いに柔軟に対応できる点が大きなメリットです。
自治体主導による細やかな運営は、地域包括ケアシステムの基盤を支える要素としても評価されています。
柔軟で多様なサービス設計
地域密着型サービスでは、通所・訪問・宿泊など複数の機能を組み合わせたサービス設計が可能です。
これは利用者の状態や生活スタイルに合わせて柔軟に支援内容を調整できるようにするためです。
たとえば「小規模多機能型居宅介護」では、1つの事業所で日中の通い、夜間の宿泊、訪問介護を一体的に提供することができます。
利用者は顔なじみのスタッフから継続的な支援を受けることができ、家族も安心して在宅生活を継続できる環境が整います。
従来の介護サービスのように利用回数・時間での積算ではなく、月額定額制(包括単位制)とすることで利用者は利用の都度費用を気にすることなく、必要な時に必要な介護サービスが利用できるというメリットもあります。
このように、利用者のQOL向上を重視した設計が、サービスの柔軟性と満足度を高めています。
利用者と提供者の近接性によるメリット
地域密着型サービスは、利用者と提供者の物理的・心理的な距離の近さが特徴です。
事業所が利用者の生活圏内にあることで、緊急時の迅速な対応や、日常的な訪問・連絡が容易になります。
また、同じ地域で生活する人々との関わりを通じて孤立感が軽減され、地域のつながりが深まるという効果も期待できます。
特に、高齢者や認知症の方にとっては、馴染みのある環境で支援を受けられることが、精神的な安定にもつながります。
こうした距離の近さは、介護サービスを“生活支援”として機能させる重要な要素となっています。
地域密着型サービスの種類と特徴
小規模多機能型居宅介護
通所・訪問・宿泊の3つのサービスを、1つの事業所で一体的に提供する介護サービスです。
利用者は登録制となっており、顔なじみのスタッフから継続的に支援を受けられる点が特徴です。
在宅生活の継続を支援するため、柔軟なサービス設計が可能であり、特に認知症高齢者の家族介護負担の軽減にも寄与します。
看護小規模多機能型居宅介護
「小規模多機能型居宅介護」に訪問看護を組み合わせたサービスです。2012年度に「複合型サービス」として創設され、2015年度の介護保険法改正にてサービスの特性を分かりやすくするため「看護小規模多機能型居宅介護」と名称が変更されました。
医療ニーズの高い高齢者や、退院後の在宅療養が必要な方に対応するため、看護師が常駐し、日常の健康管理や緊急時の医療対応が可能です。
医療と介護の両面から生活支援が行えるのが大きな魅力です。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
要介護者の生活リズムや状態に応じて、1日複数回の定期訪問と、必要に応じた随時の対応が可能な訪問型サービスです。
介護職員と看護師が連携して対応するため、24時間体制での在宅支援が可能となり、独居高齢者や夜間も支援が必要な方の安心につながります。
夜間対応型訪問介護
夜間や早朝に介護職員が利用者宅を訪問し、排泄介助や安否確認などの支援を行います。
日中だけでは対応しきれない支援をカバーし、夜間の不安を抱える高齢者や家族のニーズに応えるサービスです。
地域密着型通所介護
従来のデイサービスと同様に、日帰りで通所しながら機能訓練や食事、入浴等の介護サービスを受けることができます。
定員18人以下という小規模運営が基本で、きめ細やかな支援が可能です。
地域とのつながりを重視し、家庭的な雰囲気のなかで支援が行われるのが特徴です。
療養通所介護・短期利用療養通所介護
地域密着型通所介護のサービスの一種で、常時医療的ケアが必要な方を対象とした通所型サービスです。
療養通所の場合、ひと月単位の包括単位制が採用されています。
医療職が常駐し、日常的な健康管理や緊急対応も可能で、重度の要介護者でも安心して利用できます。
特に慢性疾患を抱える高齢者の在宅生活支援に重要な役割を果たしています。
2024年度の介護保険法改正にて、緊急時に7日以内(やむを得ない場合は14日以内)での短期利用も可能となりました。
認知症対応型通所介護
認知症の症状がある方を対象とした通所型サービスで、症状に応じた専門的な支援が提供されます。
少人数での活動を通じて、利用者の安心感を高め、認知症の進行緩和や生活意欲の向上を図ることが期待されます。
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
認知症のある高齢者が、5~9人程度の少人数で共同生活を営む形態の施設です。
家庭的な環境の中で、スタッフの見守りや支援を受けながら、できる限り自立した生活を送ることができます。
地域との交流も重視されており、認知症ケアの中核的存在とされています。
地域密着型特定施設入居者生活介護
比較的介護度の高い高齢者を対象に、介護付き有料老人ホームなどで提供されるサービスです。
日常生活全般の介護に加え、機能訓練や健康管理なども行われます。
介護保険施設と在宅サービスの中間的存在で、家庭環境での生活が難しくなった方の受け皿として機能します。
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
定員が29人以下の小規模特別養護老人ホームで、要介護3以上の高齢者が対象です。
家庭的な環境の中で、日常生活全般の介護が提供され、看取り支援まで行うことが可能です。
地域密着型として、地域住民との交流も大切にされています。
まとめ
地域密着型サービスは、少子高齢化や地域ごとの介護ニーズの多様化に対応するために導入された制度であり、自治体が主体となって運営される点が大きな特徴です。
小規模多機能型居宅介護や認知症対応型共同生活介護をはじめとするさまざまなサービスが、地域の実情に合わせて柔軟に提供されています。
利用者にとっては、住み慣れた地域で自分らしい生活を継続できるという安心感があり、事業者にとっても地域との連携を深めながら継続的な運営が可能になるというメリットがあります。
また、自治体にとっても、地域包括ケアシステムの核となる重要な取り組みとして注目されており、今後ますますの活用と発展が期待されています。
医療・福祉分野に携わる経営層の方々にとっては、地域連携を強化し、持続可能な運営基盤を築く上で、今後ますますその価値が高まると考えられます。
具体的なサービス運営にあたっては、介護ソフト「ファーストケア」など、地域密着型の業務運営を支援するICTツールの活用も大いに効果的です。