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訪問介護の倒産が過去最多91件 | 原因・前兆・赤字脱出策を徹底解説

2025年の訪問介護倒産は過去最多の91件に達しました。
この危機を防ぐには、「正しい順番での経営改善」が必要です。
倒産の8割超は売上不振が原因であり、報酬引き下げや深刻な人手不足といった構造的な逆風が、小規模事業所の資金繰りを直撃しています。
この記事では、最新データによる実態把握、自事業所の危険度がわかる前兆チェック、そして「資金繰りの安定」から着手する赤字脱出ロードマップを解説します。
自事業所の経営状況に不安を感じている訪問介護の経営者・管理者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
- 訪問介護の倒産件数は過去最多 | 2025年の全体像を最新データで把握
- 訪問介護の倒産はなぜ増える?「売上不振」を引き起こす5つの要因
- 自分の事業所は大丈夫?倒産の前兆4つのサインとセルフチェック診断
- 訪問介護事業所が倒産したら利用者・職員はどうなる?
- 訪問介護の倒産を防ぐ「12ヵ月ロードマップ型・経営改善フェーズ」
- 訪問介護に将来性はあるか?2040年問題を見据えた業界展望
- 訪問介護の倒産に関するよくある質問(FAQ)
- 【まとめ】訪問介護の倒産を防ぐ「12ヵ月で体質を変える」最初の一歩
- 経営の止血後は攻めの仕組み化へ「ファーストケア」
訪問介護の倒産件数は過去最多 | 2025年の全体像を最新データで把握

訪問介護の倒産件数は2025年は91件へ達し、介護保険制度の開始以降で過去最多という極めて深刻な状況に陥っています。
ここでは、最新の調査データから読み取れる業界の全体像として以下の3点をお伝えします。
- 訪問介護の倒産がわずか4年で2倍に膨れ上がる
- 従業員10人未満の小さな事業所から次々と破産する
- ニュースの裏で500件以上の同業者が静かに事業をたたんでいる
それぞれの具体的な数字と厳しい現実について、詳しく解説します。
訪問介護の倒産件数推移(2019年~2025年)
東京商工リサーチの調査データをもとに、訪問介護事業者の倒産件数と介護事業者全体の倒産件数の推移を確認します。

出典:東京商工リサーチ「2025年「介護事業者」倒産 過去最多の176件 「訪問介護」の倒産が突出、認知症GHも増加」(2026年1月発表)
注目すべきは、2023年以降の訪問介護の倒産件数の急激な増加です。
2021年の47件から2025年の91件まで、わずか4年で約2倍に膨れ上がりました。
令和6年度(2024年4月施行)の介護報酬改定で訪問介護の基本報酬が引き下げられたことが、2024年以降の急増に拍車をかけたとみられています。
一方、デイサービスなどの通所・短期入所は45件(前年56件)、有料老人ホームは16件(前年18件)と減少に転じており、訪問介護だけが突出して増え続けている状況です。
従業員10人未満の小さな事業所から次々と破産する
2025年に倒産した訪問介護事業者91件の内訳を見ると、体力のない「小さな事業所」が真っ先に倒れている現実が浮き彫りになります。
| 項目 | 件数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 従業員10人未満 | 79件 | 86.8% |
| 資本金500万円未満 | 73件 | 80.2% |
| 負債1億円未満 | 81件 | 89.0% |
| 破産による倒産 | 86件 | 94.5% |
参考:東京商工リサーチ「2025年「訪問介護」倒産 91件、3年連続で最多更新 「売上不振」が 8割超、マイナス改定が重しに」(2026年1月発表)
倒産の94.5%が破産(法的整理のなかでも事業継続が困難な手続き)であり、民事再生などの再建型はほぼ見られません。
小規模事業所は経営の余力が乏しく、危機に陥ってから再建を図る時間的・資金的な猶予がないことを示しています。
地域別では、大阪府(12件)、東京都(11件)、北海道(8件)、愛知県(6件)、和歌山県(5件)などが上位を占めました。
都市部だけでなく、地方部でも倒産が広がっており、地域の介護インフラが失われるリスクが高まっています。
ニュースの裏で500件以上の同業者が静かに事業をたたんでいる
ここで知っておきたいのは、ニュースで報じられる「倒産」は氷山の一角にすぎないという点です。
倒産とは、負債1,000万円以上を抱えて法的整理に至ったケースのみを指します。
一方、借金で首が回らなくなる前に、手元に資金が残っている状態で自主的に店を閉めるのが「休廃業・解散」です。
2025年、訪問介護の休廃業・解散は465件(前年比3.7%増)に達し、さらに増加しました。
つまり、倒産の91件と合わせると、2025年だけで実に556件もの訪問介護事業所が市場から消え去っているのです。
「これ以上赤字を出す前に、余力のあるうちにやめよう」
深刻なヘルパー不足や運営コストの高騰、大手との競合に疲弊し、先行きを諦めた経営者たちの切実な決断がこの数字に表れています。
ニュースで報じられる倒産件数だけでは判断が難しいため、自事業所の状況も合わせて確認することをおすすめします。
参考:東京商工リサーチ「2025年「介護事業者」の休廃業・解散653件 苦境の「訪問介護」が押し上げ、過去最多を更新」(2026年1月発表)
訪問介護の倒産はなぜ増える?「売上不振」を引き起こす5つの要因

訪問介護の倒産は、その8割超を「売上不振」が占めていますが、それはあくまで表面化した結果(直接の原因)にすぎません。
実際には、その売上低下や資金ショートを引き起こす「5つの構造的な要因」が背後に存在します。
重要なのは、これら5つの要因はバラバラに起きるのではなく、複雑に絡み合いながら「売上不振」という巨大な原因を作り出しているという事実です。
ここでは、倒産を引き起こす5つの背景(要因)について詳しく解説します。
- 要因①|求人に応募がなく現場が回らなくなる
- 要因②|基本報酬の引き下げで赤字に転落する
- 要因③|物価が高騰しても価格に転嫁できない
- 要因④|入金が遅れて黒字でも現金が底をつく
- 要因⑤|競合が乱立して大手に人材を奪われる
「自事業所が今、どの要因から最もダメージを受けているのか」を意識しながら、それぞれ見ていきましょう。
要因①|求人に応募がなく現場が回らなくなる
訪問介護の人手不足は、他の介護サービスと比較しても突出して深刻です。
厚生労働省の調査によると、訪問介護員(ホームヘルパー)の有効求人倍率は14.14倍(2023年度)に達しています。
これは全職種平均(約1.1倍)の10倍以上であり、「求人を出しても応募がない」状態が常態化しています。
2022年度には15.53倍を記録しており、高止まりが続いています。
さらに深刻なのが、現役ヘルパーの高齢化です。
訪問介護員の平均年齢は54.4歳に達し、60歳以上が全体の約4割弱を占めます。
若手の流入が少なく、ベテランの引退が進めば、今後さらに人材確保が困難になる可能性があります。
この「人が辞める→サービス提供枠が減る→売上が落ちる→待遇が改善できない→さらに人が辞める」という悪循環こそが、訪問介護の倒産を構造的に加速させています。
参考:厚生労働省「訪問介護事業への支援について(報告)」
要因②|基本報酬の引き下げで赤字に転落する
2024年4月に施行された令和6年度介護報酬改定は、訪問介護業界に大きな衝撃を与えました。
介護報酬全体では+1.59%のプラス改定であったにもかかわらず、訪問介護の基本報酬は引き下げ(マイナス改定)となったのです。
厚生労働省が引き下げの根拠としたのは、2022年度の調査における訪問介護の利益率が7.8%と、全介護サービス平均(2.4%)を上回っていた点です。
しかし、この数字には「サ高住」などに併設された効率のよい大規模事業所の利益率が含まれており、町中を走り回る小規模事業所の実態とはかけ離れていると、現場から批判が相次ぎました。
もちろん「報酬改定=即倒産」ではありませんが、加算をしっかり取得できていない事業所は、基本報酬の引き下げが直撃し、ギリギリ出ていた利益があっという間に赤字へと転落しています。
事業所の利益となる基本報酬が削られた以上、自力で業務を効率化し、新たな加算を取りにいかない限り、この赤字から抜け出すことはできません。
参考:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の主な事項について」
要因③|物価が高騰しても価格に転嫁できない
訪問介護は利用者の自宅を一軒一軒回るため、移動コストが直接経営を圧迫します。
ガソリン代の高騰や車両維持費の増加、さらには介護用品や消耗品の値上がりが、なけなしの利益を確実に削り取っています。
最大の問題は、介護報酬が国に定められた「公定価格」であることです。
一般企業なら「仕入れが上がったので値上げします」と言えますが、訪問介護ではそれが許されません。
コストが上がっても収入は固定されたまま……この逃げ場のない構造が、小規模事業所の資金繰りをじわじわと悪化させているのです。
要因④|入金が遅れて黒字でも現金が底をつく
訪問介護事業は売上の約72%が人件費に消えるといわれ、ただでさえ利益が残りにくい構造です。
赤字事業所の割合は約4割超に達しています。
さらに経営者を追い詰めるのが、「PL(損益計算書)上は黒字の月があるのに、通帳の残高がどんどん減っていく」という現象です。
その原因は、介護報酬特有の「入金サイクル」にあります。
- 国保連からの入金は、サービス提供月の翌々月(約2ヵ月遅れ)
- 一方、職員の給与や社会保険料の支払いは毎月発生する
- 処遇改善加算を職員に前払いしている場合、手元資金が先に消えていく
この「入金は遅いのに、支払いは待ってくれない」というタイムラグが、資金繰りを急激に悪化させます。
売上が立っていても、手元の現金が尽きれば倒産する……いわゆる「黒字倒産」のリスクは、訪問介護業界では決して珍しいことではありません。
参考:厚生労働省「令和5年度介護事業経営実態調査結果の概要」
要因⑤|競合が乱立して大手に人材を奪われる
訪問介護は、施設系の介護サービスと比較して初期投資が少なく、参入障壁が低い事業です。
事務所スペースと人員基準を満たせば開業できるため、介護保険制度の開始以降、事業所数は急速に増加しました。
その結果、同じエリア内に事業所が乱立し、限られた利用者と、さらに希少な「ヘルパー」の争奪戦が起きています。
特に都市部では、資本力のある大手事業者が好待遇で求人を出し、採用力や営業力で劣る小規模事業所が淘汰されやすい構図が定着しています。
自分の事業所は大丈夫?倒産の前兆4つのサインとセルフチェック診断

訪問介護の倒産を防ぐには、経営悪化の「サイン」をいち早く察知することが重要です。
倒産へと向かっている事業所には、主に以下の4つの領域で明確な前兆が現れます。
- 通帳残高や支払いに表れる「資金繰り」のサイン
- キャンセルや空き枠に表れる「稼働」のサイン
- 退職の連鎖やサ責の疲弊に表れる「人材」のサイン
- 返戻や加算のミスに表れる「請求」のサイン
自事業所が今、どの段階にいるのか、客観的に判定できるセルフチェックと合わせて詳しく解説します。
通帳残高が毎月減り続け支払いを先延ばしにする
手元の現金がどう動いているかを見れば、最も危険な前兆がわかります。
- 通帳残高の「山と谷」の差が拡大している:入金直後と月末の残高差が大きくなっていないか
- 支払いの先延ばしが常態化:仕入先や外注先への支払いを「来月にしてくれ」と頼むようになった
- 税金・社会保険料の滞納:発生すると、金融機関の信用面で不利になる可能性がある
- 借入返済のための新規借入:いわゆる「自転車操業」に陥っている
これらのサインが出ている場合は、資金繰りが急速に悪化している可能性があるため、早めの確認と対応が必要です。
キャンセルを穴埋めできず空き枠が増え続ける
事業所の売上に直結するサービスの稼働状況にも、見逃してはならない危険なサインが現れます。
- キャンセルが増加し、穴埋めができない:利用者の体調不良やスケジュール変更が起きても、代わりのヘルパーを手配できない
- サービス提供枠が縮小している:人手不足のせいで、新規の依頼を泣く泣く断っている
- 利用者の入院・施設入所が重なる:既存の利用者が減っているのに、新規獲得がまったく追いつかない
- 季節変動の影響をもろに受ける:冬場(10~12月)や夏場(6~8月)に利用者の体調が悪化し、一気に稼働率が下がる
こうした空き枠の増加が当たり前になると、人件費などの固定費だけが重くのしかかり、あっという間に赤字へと転落してしまいます。
ヘルパーの退職が連鎖してサ責が現場の穴埋めに追われる
訪問介護の生命線である「ヘルパー」の動向には、組織崩壊の前兆が最もわかりやすく表れます。
- 退職が連鎖している:1人辞めると残った職員に負担がのしかかり、さらに次の退職者を生む
- サービス提供責任者(サ責)が現場に出ずっぱり:本来やるべき管理業務が完全にストップしている
- 採用コストが膨張:高いお金を出して求人広告を出しても応募がなく、費用だけが垂れ流しになる
- 研修が停止している:日々の業務に追われ、教育に時間を割く余裕がまったくない
- スーツを着た見学者が増えた:水面下でM&A(事業譲渡)の打診がはじまっている可能性がある
現場の疲弊や不満は確実にサービスの質を低下させ、最悪の場合は人員基準すら満たせなくなり、事業の継続そのものが困難になります。
請求ミスで入金が遅れて黒字でも手元の現金が尽きる
現場がなんとか回っていても、事務処理や請求業務の乱れから、手元の現金が尽きるサインが出ています。
- 返戻・過誤が増加:国保連からの返戻が増えると、予定していた入金がさらに1ヵ月遅れる
- 処遇改善の配分帳尻が合わない:加算で受け取った金額と職員へ払った額の差額管理ができなくなっている
- 運営指導(実地指導)での指摘による返還リスク:過去の不適切な請求が発覚し、一括返還を求められる
請求や加算のミスは、確実に入るはずだった現金の「入金遅延」や「没収」を引き起こし、帳簿上は黒字でも現金がなくなる「黒字倒産」の引き金となるため厳重な注意が必要です。
5つの数字を見て、倒産へのカウントダウンを今すぐ判定する
以下のセルフチェック表を確認してください。
自事業所が今、どれほど「危険な状況」に近づいているかが見えてきます。
| No. | チェック項目 | 危険ライン(目安) | 確認する書類 |
|---|---|---|---|
| ① | 月末通帳残高の3ヵ月推移 | 3ヵ月連続で減少 | 通帳・会計ソフト |
| ② | 週次サービス提供実績(時間) | 前月比▲10%以上 | サービス提供実績表 |
| ③ | 直近6ヵ月の離職者数 | サ責 or 介護福祉士が1名退職 | 雇用契約・退職記録 |
| ④ | 返戻率 | 月の請求件数の3%以上 | 国保連の返戻内訳 |
| ⑤ | 処遇改善の配分残高 | 年度末に必要配分額に不足見込み | 配分計画表・支給実績 |
特に③の「有資格者の退職」は見逃しがちな重要指標です。
特定事業所加算を算定している事業所では、有資格者が辞めることで人員基準を満たせなくなり、翌月からの加算算定が停止する事態に直結します。
ここで押さえておくべき重要な事実があります。
特定事業所加算は基本報酬への「上乗せ」であるため、加算要件を満たせなくなっても基本報酬自体が下がるわけではありません。
しかし、「毎月当たり前に入ってきていた上乗せ分の収入」が突然消滅することになり、ギリギリで回していた資金繰りに致命的なダメージを与える可能性があります。
訪問介護事業所が倒産したら利用者・職員はどうなる?

訪問介護の倒産が現実のものとなっても、利用者や職員を完全に守るための法的なセーフティネットが存在します。
しかし、経営者が何の準備もせずに突然倒産に至った場合は、関係者全員に大きな混乱と不利益を強いることになります。
ここでは、倒産後に直面するリアルな現実と、最悪の事態を避けるための選択肢を解説します。
- 倒産しても利用者は新しい事業所に引き継がれる
- 職員は全員解雇されるがすぐに失業保険を受け取れる
- 経営者は破産しても手元に生活資金を残して再起できる
- 完全に倒産する前に事業を縮小したり他の事業所に譲渡する
万が一の事態に備え、誰がどう守られるのかを正確に把握しておきましょう。
利用者への影響(転所支援の実際)
訪問介護事業所が倒産した場合、利用者へのサービスは停止します。
しかし、以下のセーフティネットが機能します。
- ケアマネジャーによる連携:担当ケアマネジャーが新しい事業所を探し、引き継ぎを調整する
- 自治体の介入:市区町村の介護保険担当課が利用者の受け入れ先を確保するよう動く
- 事業譲渡によるサービス継続:M&Aや事業譲渡が成立すれば、利用者がそのまま同じヘルパーからサービスを受け続けられるケースもある
ただし、地方部で代替となる事業所が少ない地域では、利用者が必要な介護サービスを受けられなくなる「介護難民」リスクが現実に存在します。
利用者やその家族にとって、訪問介護は在宅生活を支える生命線であり、事業所の倒産は生活基盤そのものの崩壊を意味する場合があります。
職員への影響(解雇・失業保険・転職)
事業所が破産した場合、雇用契約は終了し、職員は解雇されるケースが一般的です。
ただし、状況により支援制度を利用できる場合があります。
以下は主な制度の例です。
- 失業保険の早期受給:倒産による離職は「特定受給資格者」に該当し、待機期間は7日間のみ(自己都合退職の場合の原則1ヵ月の給付制限なし)
- 未払賃金立替払制度:事業主が破産した場合、未払いの賃金の一部を独立行政法人労働者健康安全機構が立て替えて支払う制度がある(厚生労働省所管)
- 解雇予告手当:30日前の予告がなかった場合、30日分以上の平均賃金を受け取る権利がある
なお、介護業界は慢性的な人手不足であるため、転職先自体は比較的見つかりやすい状況にあります。
特に介護福祉士などの資格を持つ職員は、引く手あまたです。
参考:厚生労働省「離職されたみなさまへ」
参考:労働者健康安全機構「未払賃金の立替払事業」
経営者は破産しても手元に生活資金を残して再起できる
法人の破産は、経営者個人にとっても大きな痛手であり、人生の転機となります。
しかし、「すべてを失って終わり」ではありません。
- 自由財産の確保:99万円以下の現金や生活必需品は、破産手続きにおいても手元に残る
- 自宅:賃貸であれば居住を継続できる。持ち家の場合は処分対象になる可能性がある
- 経営者保証ガイドライン:個人保証の整理について、一定の手続きに基づいて協議できる
- 資格は失われない:介護福祉士やケアマネジャーなどの資格は、破産によって剥奪されることはない。再び介護業界で働くことは可能
参考:法務省民事局 大人への道しるべ「第11話 | 自己破産は最後の切り札?」
参考:北九州の弁護士【平井・柏﨑法律事務所】「自己破産で制限される資格・職業一覧」
「倒産」の前に選べる3つの道(縮小・譲渡・再設計)
自己破産などの「倒産」はあくまで最終手段であり、その手前には被害を最小限に食い止める選択肢が残されています。
訪問介護において民事再生(事業を続けながら借金を減らす手続き)は事実上困難ですが、現金が底をつく前であれば、以下の3つの道を選ぶことができます。
①事業規模の縮小
提供エリアを限定する、サービスの種類を絞るなど、規模を縮小して収支を改善する方法です。
ただし、利用者のサービスを急に打ち切ることはできません。
ケアマネジャーとの調整、家族への説明、後任事業所の確保に1~2ヵ月は必要です。
「強引に切る」のではなく「計画的に他へ移す」という誠実な設計が求められます。
②事業譲渡・M&A
事業を他の事業所に譲渡することで、利用者へのサービスと職員の雇用を維持できる可能性があります。
訪問介護事業所にとって、地域のケアマネジャーとの紹介ネットワークと経験豊富なヘルパーは、譲受側にとって資産です。
「負債があるから売れない」と諦める前に、専門家へ相談する価値は十分にあります。
③「何をやめるか」を決める(事業の再設計)
縮小でも譲渡でもない第三の選択肢が、「やらないことリスト」の作成です。
- 遠方への訪問をやめ、エリアを集中させる
- 利益率の低い生活援助の比率を見直す
- 惰性で続けている営業活動や無駄な内部会議をやめる
「何をやめるか」を決断した瞬間、限りある職員や経営資源を、本当に利益を生む場所に集中させることができます。
もちろん、これもケアマネジャーと連携した計画的な移行プロセスとセットで進めることが大前提です。
参考:e-Gov 法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第9条」
訪問介護の倒産を防ぐ「12ヵ月ロードマップ型・経営改善フェーズ」

訪問介護の倒産を防ぐためには、いきなり売上を追うのではなく、まずは現金の流出を食い止める「止血」からはじめる必要があります。
しかし、一時的な止血だけではすぐに赤字が再発してしまいます。
経営体質を根本から変えるには、「12ヵ月」という現実的な期間を想定して動かなければなりません。
なぜ12ヵ月なのか。
介護報酬の入金が2ヵ月遅れであること、特定事業所加算の取得に向けた実績づくりが必要なことなど、介護業界ならではの「時間がかかる理由」があるからです。
※本ロードマップの使い方:これは固定された計画ではありません。
3ヵ月ごとに「判定ポイント」を設け、柔軟に見直せるようにしています。
2026年6月の臨時改定など外部環境の変化に応じて、優先順位を柔軟に見直しながら進めてください。
それでは、各フェーズの具体的な取り組みを詳しく解説します。
フェーズ1(1~2ヵ月目):止血と状況把握
経営改善の第一歩は、自分たちが今どれくらい追い詰められているのかを正確に把握し、一刻も早く現金の流出を止めることです。
フェーズ1では以下の4点に取り組みます。
- いつ現金が底をつくかを正確に把握する
- 請求ミスをなくして確実に入金させる
- お金をかけずにサ責やヘルパーの不満を和らげる
- 使っていない不要なサービスを今すぐ解約する
それぞれの具体的なアクションについて見ていきましょう。
いつ現金が底をつくかを正確に把握する
すべての出発点は、「いつ資金が尽きるか」というタイムリミットの日付を特定することです。
売上ではなく「入金ベース」で、今後13週間(約3ヵ月)の資金繰り表を作成してください。
- 国保連からの入金はサービス提供月の翌々月(約2ヵ月遅れ)に振り込まれる
- 処遇改善加算の支払いは毎月先行するため、手元資金が先に減っていく
- 「通帳残高がゼロになる日付」を特定することが、すべての判断基準になる
資金の底がいつ来るかを正確に把握できたら、次は漏れている利益を塞ぐ作業に移ります。
請求ミスをなくして確実に入金させる
国保連からの返戻が1件発生すると、予定していた入金がさらに1ヵ月遅れ、資金繰りの首を絞めます。
主な返戻原因は以下の3つです。
- サービス計画書と実際の提供実績がズレている
- サービス提供時間を実際の時間ではなく一律で記載している
- 減算の根拠となる書類が不足している
今月中に返戻の原因を特定し、翌月の請求で確実に修正してください。
この作業はICTシステムがなくても手作業で実行可能です。
ただし、人間の目によるチェックには限界があるため、フェーズ3でシステム化して再発を防ぎます。
サ責やヘルパーの不満を和らげる
手元に現金がなくても、今すぐ着手できる離職防止策があります。
- サ責や介護福祉士と個別面談をおこなう
- 離職理由の34.3%が「職場の人間関係」。まずは不満や悩みを聴くことからはじめる
- 移動時間の偏りを可視化して是正する
- 特定のヘルパーばかりが遠方へ訪問していないかシフトを確認する
- 記録の書き方を統一して簡素化する
- ヘルパーごとにバラバラな記録様式を統一し、確認作業による残業を減らす
有資格者が退職すると、特定事業所加算の要件を満たせなくなり、加算が算定できなくなって収入が減少する場合があります。
人材を守ることは、現金を確保することと同じくらい緊急の課題です。
参考:公益財団法人介護労働安定センター「―令和5年度 介護労働実態調査結果について―」
使っていない不要なサービスを今すぐ解約する
痛みをともなう大きな改革の前に、今日すぐにできる経費削減があります。
- 誰も使っていないSaaSアカウントやサブスクリプションを停止する
- 不要になった通信回線を解約する
- 重複して契約しているサービスを整理する
月数千~数万円の削減であっても、資金繰りが逼迫している状況では確実な延命効果があります。
なお、車両リースや保険、外注費などの本格的な見直しは契約更新のタイミングがあるため、フェーズ2~3で実施します。
フェーズ1終了時の判定ポイント(2ヵ月目末)
フェーズ1の取り組みを終えた2ヵ月目の月末に、以下の基準で自事業所の状況を判定し、次のアクションを決定してください。
| 判定項目 | 次のアクション |
|---|---|
| 13週CF表で3ヵ月以内に資金ショートの見込み | 「縮小・譲渡」の検討を並行開始(前セクション「倒産の前に選べる3つの道」を参照) |
| 資金ショートは3ヵ月超先、返戻原因の特定完了 | フェーズ2へ進む |
フェーズ2(3~6ヵ月目):収入改善と基盤づくり
止血が完了し手元資金の状況が把握できたら、次は既存のリソースを最大限に活かして収入基盤を整えます。
フェーズ2では以下の4点に取り組みます。
- スケジュールのムダをなくしケアマネジャーから指名される
- 確実な体制をつくり取れる加算をすべて取得する
- 3ヵ月連続で返戻をゼロにし入金の遅れを完全に防ぐ
- 車両リースや保険の契約を見直して固定費を賢く削る
売上アップと基盤づくりの具体的な手順を見ていきましょう。
スケジュールのムダをなくしケアマネジャーから指名される
稼働率を上げるためには、内部のシフト改善と外部へのアピールの両輪を回すことが重要です。
【内部のシフト改善】
- 当日対応枠の設定:急なキャンセルや依頼に対して、誰が何時まで動けるかを事前に決めておく
- 提供エリアの絞り込み:移動時間を削減し、同じ人数で訪問件数を増やす
- 曜日・時間帯の偏りをなくす:特定の曜日に集中している訪問を分散させる
新規の営業に走り回るより先に、今ある「空き枠」を無駄なく埋めることが最優先です。
【ケアマネジャーから選ばれる理由をつくる】
稼働率が上がらないのは、提供枠がないからだけではありません。
ケアマネジャーが「あの事業所には頼みたくない」と敬遠している可能性もあります。
- 利用者の変化を速く正確に報告する
- 急なトラブルにもフットワーク軽く対応する
- いつでも連絡がつき相談しやすい体制をつくる
こうした連携の質を高めることが、中長期的な売上アップに直結します。
利用者が「あのヘルパーさんが来る日が楽しみ」と思えるサービスを提供すれば、自然と口コミで紹介が増えていきます。
確実な体制をつくり取れる加算をすべて取得する
特定事業所加算は、体制と記録が確実に回せるかで取得の判断をします。
届出は算定開始月の前月15日必着です。
- ヘルパー向けの研修計画をつくる
- 月1回の全員参加会議を開き実績を残す
- 24時間連絡が取れる体制を整える(加算Ⅰ・Ⅱの場合)
- 必要な有資格者の割合をクリアする
これらの要件を満たすには数ヵ月かかるため、フェーズ2で準備を開始し、フェーズ3での算定開始を目指します。
【注意】 届出は通常「前月15日」ですが、特定事業所加算は「2~3ヵ月前の事前協議」を求める自治体が多いため、早めにスケジュールを確認しましょう。
処遇改善加算は、月次で「加算見込み額」「賃金改善実績」「繰越見込み」を突合管理します。
加算額に相当する賃金改善を実施することが要件であり、年度終了後には実績報告で確認されます。
期末になって「配分額が足りない!」と焦って一括返還を求められることがないよう、毎月の管理を徹底してください。
参考:厚生労働省「介護保険最新情報 Vol.1474」「介護保険最新情報 Vol.1367」
3ヵ月連続で返戻をゼロにし入金の遅れを完全に防ぐ
フェーズ1で修正した返戻・過誤の再発がないことを3ヵ月連続で確認して、はじめて「止血完了」と判定します。
月次の請求チェックフローを確立し、運営指導で指摘されやすいポイント(計画と実績の不一致、一律時間記載、減算根拠書類の不備)を継続的に点検してください。
車両リースや保険の契約を見直して固定費を賢く削る
フェーズ1で特定した契約の見直しを、このフェーズで実行に移します。
- 車両リース:契約更新時期に合わせて台数・条件を見直す
- 保険:年払いの更新時期に合わせて本当に必要な補償内容を精査する
- 外注費:忙しい時期と暇な時期に合わせて契約範囲を縮小する
- 通信プラン:バラバラの契約を法人向けのお得なプランへ統合する
無駄な経費を削り、請求と稼働が安定してきたら、いよいよ次の投資フェーズへ進むかどうかの判定をおこないます。
フェーズ2終了時の判定ポイント(6ヵ月目末)
半年が経過した段階で、CF(キャッシュフロー)と稼働率の回復具合をチェックし、次のフェーズ3へ進めるか見極めます。
| 判定項目 | 次のアクション |
|---|---|
| 返戻率が3ヵ月連続で改善、稼働率が回復傾向 | フェーズ3へ(ICT投資の検討を開始) |
| 稼働率が横ばい、CF改善が入金に反映されない | フェーズ2を延長(エリア縮小・サービス再設計を検討) |
| CFが改善せず、資金ショートの見込みが再浮上 | 「縮小・譲渡」を本格検討 |
※2026年6月臨時改定の影響チェック:フェーズ2の途中で臨時改定が施行されます。
改定後の加算単位数や処遇改善の新要件を確認し、加算戦略を再設計してください。
フェーズ3(7~12ヵ月目):中期投資と構造強化
経営基盤が安定してきたら、根本的な業務改善とさらなる収益強化に向けた中期投資をおこないます。
フェーズ3では以下の3点に取り組みます。
- タブレットやアプリを活用して残業をなくし離職を根本から防ぐ
- 準備してきた特定事業所加算の届出を出し収入を上乗せする
- 稼働状況に合わせて契約を更新しさらに経費を最適化する
攻めの経営に転じるための具体的なステップを解説します。
タブレットやアプリを活用して残業をなくし離職を根本から防ぐ
- 前提条件:キャッシュフローが安定し、フェーズ2の判定を通過していること。
資金が安定しない段階でのICT投資は、かえって経営を悪化させる可能性があります。 - 導入スケジュールの目安:厚生労働省「介護サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引き」では、「本格導入に向けては、各法人の状況によるものの、少なくとも半年~1年程度の時間を見込むことが望ましい」とされています。
導入ステップ:
- 導入計画をつくる(どの業務をどう効率化するか決める)── 1ヵ月
- ソフトを選ぶ(複数比較し、無料トライアルを試す)── 1~2ヵ月
- 業務の流れを見直し、職員に説明する ── 1ヵ月
- 研修をおこなう(機械が苦手な職員でも使えるか確認する)── 1~2ヵ月
- 本格的に運用し、効果を検証する ── 継続
ICTで解決できること:
- 記録の電子化:移動中にタブレットで完結 → 残業削減 → 離職防止
- スケジュール最適化:移動時間の可視化・調整で訪問件数を最大化
- 請求チェックの自動化:返戻リスクの事前検出 → フェーズ1で伏線を張った課題の根本解決
- 加算管理の一元化:特定事業所加算の要件管理・処遇改善の配分管理を効率化
ICT初期費用の壁を超える3つの方法:
- 介護テクノロジー導入支援事業:各都道府県で実施。
費用の1/2~3/4を補助、最大260万円(令和7年度)。
申請時期は都道府県により異なるため、フェーズ2の段階で自治体のWebサイトを確認しておく - デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金):経済産業省所管。
介護ソフトなどの導入費用を最大450万円補助 - 無料トライアル・段階的導入:記録の電子化からはじめ、効果を確認しながら範囲を広げる。
一括導入ではなく「小さくはじめて大きく育てる」
参考:厚生労働省「令和8年度概算要求の概要(老健局)」「令和8年度概算要求の概要(老健局)の参考資料」
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「ファーストケア・アサインPro/アサインモバイル」などを活用して、まずは自事業所の業務がどれくらい改善できるか、体験版で確かめてみてください。
準備してきた特定事業所加算の届出を出し収入を上乗せする
フェーズ2でコツコツと準備してきた要件(研修実績・会議実績・人員基準など)が整ったタイミングで、いよいよ加算の届出を出します。
届出は算定開始月の前月15日必着です。
取り組み開始から1年以内の算定スタートを現実的な目標に設定しましょう。
稼働状況に合わせて契約を更新しさらに経費を最適化する
フェーズ2で打診しておいた車両リース・保険・外注費・通信費の契約更新を実行します。
サービスの質は維持したまま、現在の稼働実態に合わせて契約条件を最適化し、固定費をさらに削減します。
フェーズ3終了時の判定ポイント(12ヵ月目末)
1年間の経営改善の総決算として、最終的な成果と今後の事業方針を判定します。
| 判定項目 | 次のアクション |
|---|---|
| ICT導入済み、特定事業所加算算定中、CF安定 | フェーズ4(定着期)へ |
| ICT導入途中、加算準備中 | フェーズ3を延長(~18ヵ月)焦らず定着を優先 |
| CF改善したが稼働率が回復しない | エリア・サービス構成の抜本見直し |
これらの判定をクリアできれば、倒産危機を脱し、安定した事業運営のフェーズへと移行できます。
フェーズ4(13ヵ月目~):業務改善を定着させ制度改定や次の時代へ備える
1年間のロードマップを完走した後は、その効果を定着させ、さらに先を見据えた次世代への備えを進めていく段階に入ります。
- ICT導入効果の検証:記録にかかる時間、職員の残業時間、返戻率がどう変わったかを数字で評価する
- 生産性向上推進体制加算の検討:ICTを活用した実績をアピールして新たな加算を取る。
詳細は「生産性向上推進体制加算の解説記事」を参照 - 次回介護報酬改定(2027年度予定)への準備:国の方針を早めにキャッチし、ルールが変わる前に対応を先取りする
- 保険外サービスとの融合:介護保険に頼らない自費サービスを組み合わせて、収入の柱を増やす
- 「拡大・維持・縮小・譲渡」を数字で判断:どんぶり勘定ではなく、12ヵ月の実績データをもとに今後の会社の進むべき道を冷静に決断する
12ヵ月にわたる経営改善ロードマップは以上です。
倒産の危機は、正しい順番で対策を打つことで乗り越えられる可能性が高まります。
まずはフェーズ1の「いつ現金が底をつくかを正確に把握する」ことから、今日すぐに行動を起こしましょう。
訪問介護に将来性はあるか?2040年問題を見据えた業界展望

訪問介護の倒産ニュースが相次ぐなか、「この業界に将来性はあるのか?」と不安になる経営者も多いはずです。
現時点の見通しでは、訪問介護の需要は今後も一定程度見込まれます。
しかし、これからは以下のように「業界の形」が大きく変わっていきます。
- 倒産が増えても在宅介護のニーズは拡大し続ける
- 稼働率と加算の有無でオーナーの年収が天と地ほど変わる
- 迅速な対応でケアマネジャーから指名され続ける事業所になる
- テクノロジーでヘルパーの負担を減らし次の時代を生き抜く
生き残るのは、「大手に集約される事業所」か「ICTと加算で生産性を高めた地域密着型事業所」のいずれかになるでしょう。
これからの時代を生き抜くための条件について詳しく解説します。
倒産が増えても在宅介護のニーズは拡大し続ける
日本は世界に類を見ない超高齢社会に突入しています。
厚生労働省の推計では、2040年度には約57万人の介護人材が不足すると見込まれています。
高齢者人口の増加にともない、在宅介護の需要は今後も拡大し続けることは確実です。
「訪問介護がなくなる」と言われる背景には、事業所の倒産や廃業の増加があります。
しかし、淘汰されていくのは「経営環境の変化に適応できなかった事業所」であり、業界そのものが消えるわけではありません。
需要と供給のギャップがますます広がるなかで、地域に必要とされる事業所の価値はむしろ高まっています。
参考:厚生労働省「介護人材確保の現状について」
稼働率と加算の有無でオーナーの年収が天と地ほど変わる
訪問介護事業所のオーナー年収は、一般的に500万~1,000万円(中央値で約700万円前後)とされています。
ただし、この数字は事業所の規模、稼働率、加算取得状況によって大きく変動します。
| 指標 | 黒字事業所 | 赤字事業所 |
|---|---|---|
| 稼働率 | 高い(提供枠を最大限活用) | 低い(空き枠が多い) |
| 特定事業所加算 | 取得済み | 未取得 |
| 人件費率 | 適正範囲内 | 高い(74%超) |
| ケアマネジャーからの紹介 | 安定的 | 減少傾向 |
| ICT活用 | 導入済み | 未導入 |
赤字事業所と黒字事業所の差には、市場環境だけでなく、加算取得や稼働管理などの経営管理面も影響します。
加算を確実に取り、無駄な空き枠をなくす「経営管理の差」が、そのままオーナーの年収格差となって表れるのが実態です。
迅速な対応でケアマネジャーから指名され続ける事業所になる
ICT活用と加算取得による生産性向上はもちろん重要です。
しかし、生き残る事業所の本質は、「この事業所でなければならない理由」を持っているかどうかにあります。
ケアマネジャーが「ここに頼みたい」と思う事業所には、共通する特徴があります。
- 報告の質:利用者のささいな変化を正確かつスピーディーに共有してくれる
- 緊急対応の速さ:急な依頼やトラブルが起きてもフットワーク軽く対応してくれる
- 利用者の満足度:「あのヘルパーさんが来る日が楽しみ」と利用者から感謝されている
これらは一朝一夕では築けない「信頼の蓄積」です。
だからこそ、地域に根ざした小規模事業所にも、大手にはない強みがあるのです。
テクノロジーでヘルパーの負担を減らし次の時代を生き抜く
訪問介護の未来は、テクノロジーとの融合によって大きく変わろうとしています。
これらはすでに実証段階にあり、「遠い未来の話」ではありません。
もうはじまっているのです。
- 遠隔モニタリングとの併用:センサーやウェアラブルデバイスで利用者の状態を常時把握し、訪問の頻度や内容を最適化
- AIによる記録自動生成:音声入力やセンサーデータから介護記録を自動作成し、ヘルパーの記録負担を大幅に軽減
- ロボット補助による身体負荷軽減:移乗介助などの重労働をロボットがサポートし、ヘルパーの身体的負担を減らす
- 保険外サービスとの融合:介護保険サービスと自費サービスを組み合わせた、柔軟なケアプランの提供
ただ倒産の危機に怯えるのではなく、少ない人数でも回る「次の時代の事業所」へどう進化していくか。
その未来図を描くことこそが、これからの経営者に強く求められています。
訪問介護の倒産に関するよくある質問(FAQ)

訪問介護の倒産に関するよくある疑問に簡潔に回答します。
すでに本文で詳しく解説した内容も含まれますが、おさらいとして重要なポイントをまとめています。
- Q1. 訪問介護の倒産件数は過去最多ですか?
- A1. はい。
2025年の訪問介護事業者の倒産は91件で、介護保険制度開始以降の過去最多を3年連続で更新しています(東京商工リサーチ調べ)。 - Q2. 訪問介護が潰れる一番の理由は何ですか?
- A2. 最大の原因は「売上不振」で、2025年の倒産91件のうち75件(82.4%)を占めています。
ヘルパー不足によるサービス提供枠の縮小、大手との競合激化、ケアマネジャーからの紹介減少などが複合的に作用しています。 - Q3. 倒産の前兆にはどのようなサインがありますか?
- A3. 「通帳残高の3ヵ月連続減少」「サービス提供時間の前月比10%以上の減少」「サ責や介護福祉士の退職」「返戻率の上昇」「処遇改善の配分不足」の5つが主な前兆です。
この記事のセルフチェック表で自事業所の状態を確認できます。 - Q4. 事業所が倒産したら利用者はどうなりますか?
- A4. 担当ケアマネジャーが新しい事業所への引き継ぎを調整し、自治体も受け入れ先の確保に動くでしょう。
ただし、代替事業所が少ない地域では「介護難民」リスクがあります。
事業譲渡が成立すればサービスが継続されるケースもあります。 - Q5. 職員は失業保険をすぐ受け取れますか?
- A5. はい。
倒産による離職は「特定受給資格者」に該当し、待機期間は7日間のみで受給できます(自己都合退職の原則1ヵ月の給付制限なし)。
また、未払賃金立替払制度も利用可能です。 - Q6. 訪問介護はなくなるのですか?
- A6. なくなりません。
高齢者人口の増加で在宅介護の需要は拡大し続けます。
ただし、経営体質を変えられない事業所の淘汰は加速します。
「なくなる」のは業界ではなく、変化に対応できない事業所です。 - Q7. 訪問介護オーナーの年収はいくらですか?
- A7. 一般的に500万~1,000万円(中央値で約700万円前後)です。
ただし、稼働率や加算取得の有無、事業所の規模によって大きく異なります。
赤字事業所では役員報酬を削って資金繰りに充てているケースも少なくありません。 - Q8. 訪問介護業界の最大手はどこですか?
- A8. 売上規模ではニチイ学館(現ニチイホールディングス)、ツクイ、セントケア・ホールディングなどが大手として知られています。
近年はM&Aによる業界再編が加速しており、大手への集約が進んでいます。 - Q9. 経営改善にはどのくらいの期間がかかりますか?
- A9. 現実的な目安は12ヵ月です。
介護報酬の入金サイクル(2ヵ月遅れ)、ICT導入の定着期間(半年~1年)、特定事業所加算の取得準備期間を考慮すると、短期間での劇的改善は難しいのが実態です。
この記事のフェーズ1~4のロードマップを参考にしてください。 - Q10. ICTを導入する資金がない場合はどうすればいいですか?
- A10. 介護テクノロジー導入支援事業を活用すれば、費用の1/2~3/4が補助されます(最大260万円、令和7年度)。
経済産業省のデジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)も併用可能です。
申請時期は都道府県により異なるため、早めに自治体のWebサイトで確認してください。
【まとめ】訪問介護の倒産を防ぐ「12ヵ月で体質を変える」最初の一歩

訪問介護の倒産は過去最多の91件を記録し、休廃業・解散を含めると556件もの事業所が市場から撤退しています。
- 売上不振
- ヘルパー不足
- 報酬改定
- コスト高騰
- 損益構造の過当競争
これら6つの原因が連鎖する悪循環は、構造的な問題であり、経営者個人の努力だけでは断ち切れません。
しかし、2026年6月の臨時改定(改定率+2.03%、処遇改善の拡充)によって、制度的な追い風もはじまりつつあります。
今週できること:
- 13週キャッシュフロー表をつくる
- 返戻の原因を1件だけ特定する
- サ責と15分だけ話をする
- 未使用のサブスクリプションを1つ止める
12ヵ月かけて変えること:
- 稼働率を回復させ、加算を取得する
- ICTで業務を仕組み化する
- 「選ばれる事業所」としての信頼を蓄積する
この記事のセルフチェックを確認してください。
自事業所が「今どの危険ラインにいるか」がわかれば、やるべきことが見えてきます。
「正しい順番」で「現実的な期間」をかけて取り組めば、経営体質を変えることは可能です。
経営の止血後は攻めの仕組み化へ「ファーストケア」

この記事でお伝えしたとおり、倒産を防ぐためには「正しい順番」での経営改善が重要です。
先ほどお伝えしたとおり、まずは13週キャッシュフロー表をつくり、お金をかけない業務改善で確実な「止血」からはじめてください。
そして、キャッシュフローが安定し「フェーズ3」のICT導入段階に入ったとき。
あるいはすでにその段階にあり、さらなる飛躍を目指すときには、弊社が提供する介護ソフト「ファーストケア」がお力になります。
約30年にわたり介護現場のリアルな課題と向き合ってきたファーストケアなら、事業存続の鍵となる「離職防止」と「稼働率・加算の向上」をバックアップできます。
【離職防止】タブレットで「直行直帰」を実現「ファーストケア・アサインモバイル」
「ファーストケア・アサインモバイル」は、移動先で記録が完了するアプリです。
夕方の「記録のためだけの帰社」がなくなり、サービス提供責任者やヘルパーの残業を削減します。
残業や非効率な業務フローは、人間関係の悪化や退職の連鎖を招く大きな要因です。
「ファーストケア・アサインモバイル」の活用で、記録業務にともなう残業の削減を目指しましょう。
【稼働率アップ】パズル状態のシフトを最適化「ファーストケア・アサインPro」
頭を悩ませるヘルパーのスケジュール調整を効率化するアプリです。
職員の空き時間を可視化し、無理なく無駄なく「当日対応枠」を埋めることで、稼働率を最大化します。
「ファーストケア・アサインPro」で計画を立て「ファーストケア・アサインモバイル」で現場のヘルパーとリアルタイムに情報共有できます。
【確実な入金】返戻・過誤の防止と加算の算定サポート
「ファーストケア」は、請求・記録・計画書を1つに集約した介護ソフトです。
煩雑な特定事業所加算や処遇改善加算の要件管理を一元化し、クリーンな請求基盤を構築します。
「本当にうちの事業所でも使いこなせるだろうか?」
「導入の費用は回収できるだろうか?」
その疑問はもっともです。
だからこそ、いきなり導入を決める必要はありません。
ファーストケアでは、実際の画面に触れて効果を実感いただける【無料体験版】をご用意しています。
まずは「自事業所の業務がどれくらい楽になるか」、そして「12ヵ月後のロードマップのゴール」を具体的にイメージするために、無料の資料請求または体験版をお気軽にお試しください。
事業の存続と、そこで働く職員の笑顔を守るために。
私たちと一緒に、「選ばれる事業所」への第一歩を踏み出しましょう。

